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涙を流したリナリアにコハルは頭を撫でた。
「そこはごめんじゃなくてありがとうでしょう」
にっこり笑いながらコハルは言った。
「うん。そうだね。私、犬に吠えられて泣いた時もコハルは守ってくれた。なんだかコハルがお兄ちゃんみたい」
「なんでさ」
コハルはお腹を抱えながら言った。
「実際に兄弟逆転している家族いるんだよ。姉より弟がしっかり者とか」
「いいや、僕は甘えん坊気質だから」
「じゃあ、甘えてみる」
顔をのぞき込まれてリナリアの口を人差し指で抑えた。
「リナリアがもっとしっかりしてたら甘えてあげるよ」
ふくれっ面を浮かべながらリナリアは抗議した。
「コハルの癖に生意気だぞ」
「生意気でいいよ。それより急におかしくなったこの街どうなっているんだろう。悲鳴が上がったのはさっきの生き物がいたからかな」
「分からないけど。多分そうだよ。地震も起きたし」
「逃げ切れた人たちと合流した方が大丈夫だと思う。大人の人たちが何とかしてくれるだろうし。それに空はまっく・・・何なんだあれは」
コハルは大きな何かを指した。暗くて何かは分からないけど赤い稲妻が光っていることは分かる。
「あれは一体」
リナリアも息を呑むように言った「あそこは街の方角だよ。でも何かが上へと昇っていない?」
コハルの言葉に目を凝らしながら見つめたリナリアは
「建物の破片だよ」
と差しながら答えた。
「世界が消えるの」
コハルの言葉にリナリアは不安を隠さない。
「どうしよう」
ある日突然世界が消えるなんて信じられない。建物が上へ流された以上、人の安否は望めない。
「逃げよう。世界が消えでも、命が尽きても逃げるんだ」
コハルはリナリアの手を両手で握ると
「うん」
リナリアは強く頷いた。
どこへ逃げればいいか分からないけどとにかく街から離れるべきだ。
走って逃げようとすると夕日に見た生物を見かけた。
「こんなときに。こっちだよ」
リナリアを促すと身体を低くしながら謎の生物から目を盗んだ。
森の中を駆け港へ駆け巡った。
必死に走って時間が何分経ったのか分からない。
「コハル、私これ以上は」
肩で息する余裕がなく膝に手を置いたリナリアに
「ごめん、だけど諦めたらダメだ」
激励するとリナリアは息を整えコハルの身体に身を預けるように抱きついた。唐突に抱きつかれコハルは硬直してしまう。
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