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「本当に世界が消えたら私は私の気持ちをコハルに伝えれない」
言葉の理解を追いつけずコハルはじっとしたままだ。リナリアはコハルに気にすることなく言葉を続けた。
「だからコハル一回しか言わないから私の目を見て聞いて」
コハルから離れ真っ直ぐコハルの目を見つめた。
「愛してる」
その言葉に強ばっていた身体を解いた。そして塞がれる唇。ほんの果物の香りがした。唇が開放されリナリアは口元に手を置きながら可愛らしく動揺していた。
「リナ」
体から汗が湧き出るように熱い。ただ名前を呼ぶことしか出来なかった。
「私まだ走れるから」
にっこりと腰に手を置きながらリナリアは答えた。
言葉を選ぼうとしても頭に浮かんでこなくリナリアは付け足すように
「これは私の一方的な告白だからコハルは無理をしてまで告白はしないで。自分の気持ちが決まったら教えてね」
★
リナリアの告白を返事できないまま街から遠ざかっていた。
「私ね世界が消える前に自分の気持ちを伝えれてよかったと思っているよ。だって気持ちを伝えれないまま最期を迎えたくないじゃない」
確かにリナリアが言うことは正しいとコハルは思う。
「そうだね」
棒読みのように返事してしまった。
「コハルは私と一緒にいて楽しかった」
問いにコハルは我に返ったように返事した。
「凄く楽しかった。一緒にいるだけで幸せだった」
「そっか。コハルにとって私は大事な存在になれたんだね」
嬉しそうに両手を組みながらリナリアは言うとコハルの身体に寄りかかるようにした。何も無かったように体で支えるとリナリアは言葉を続けた。
「最後に約束をしよう」
「なんの約束」
「もしお互い生き延びることができたら今度はコハルが私を迎えに来て。私がコハルを追いかけたように」
身体に寄りかかったままコハルの顔を見て言った。
「分かった」
小指を差し出すとリナリアが小指を絡めてきた。
「その時が来ても私の知っているコハルでいてね」
言葉の意味がわからず頷いてしまった。リナリアは満足そうに笑った。
突然、また地面が揺れた。この揺れは何かが落ちた揺れだ。
「今度は何」
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