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コハルはリナリアを庇うように身構えた。
さらに辺りが暗くなるのを感じた。周囲を見渡すと大きな影。瞳だけが黄色に輝いているのが分かる。顔から触覚みたいのが動いているのが分かる。
「これは本当に危ない奴だ」
大きな影を見上げながらコハルは言った。大きな影は拳を握り締め地面に叩きつけるようにぶつけた。そこから湧き出るように出てきた小さな影。
「行こう」
コハルはリナリアの手を握り駆けた。武器があればなんとか小さな影を退治できるけど、為す術がない以上逃げるしか無かった。幸いこんな山奥でも街灯が照らされているのが救いだった。道がはっきり見えたから。
距離は縮まっていないものの影たちは追いかけてきてる。ずっと走り続けたらいつかやられるかもしれない。
「まだ追いかけてくるよ」
リナリアが後ろを垣間見ると言った。坂がきつくなってきた。呼吸が荒くなる。無我夢中で走ったからかその先は
「崖だ」
下を見下ろせば荒波だ。下手をしたら命の保証がない。だけど時間が経っても影たちにやられてしまう。絶体絶命だ。
「精一杯逃げた。残る選択はふたつ。あれに消されるか、このまま転落するか。ふたつにひとつだ」
諦めたようにコハルは言った。
「私は決めたよ。これからやることは自殺行為だけど生き延びる為にそれをする」
リナリアは崖を見つめながら言った。たしかに襲われて命を投げ出すよりはマシだ。
「そういう考えは好きだよ。もう後戻りは出来ない。覚悟はいい」
こくりとリナリアは頷いた。瞬間に小さな影は飛びかかってきた。手をつないだまま海へ。
★
波の音がした。鼻腔から海の香り。ゆっくり瞳をあげるとリナリアの顔が見えた。
「よかった、コハルも起きたんだね」
安堵したようにリナリアは息を吐いた。リナリアの顔は逆さまに見えてぼーっとする頭の中を考えて覚醒した。
「もしかして、膝枕されてる」
コハルは困った笑顔を浮かべた。
「うん」
今更赤面する事はない。起き上がろうとするとリナリアは支えてくれた。
「ありがとう。どれくらい時間が経ったのか分からないけど足痺れているんじゃない。頭って重たいし」
「大丈夫だよ!だってほら…きゃあ」
いきなり立った勢いで体制を崩しコハルに倒れる。押し倒す形になって鼻と鼻が触れ合う距離にコハルは足を少し動かすとリナリアの痺れた足に触れ
「し、しびれるー」
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