偽りのそのあとで

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 翌日の放課後、私たちは二人で市役所に来ていた。 「どうするの……?」 「戸籍謄本を取るの」 「戸籍謄本?」 「そう」  用紙に必要事項を書いて、係りの人に渡した。 「何に使うのかだけ教えてもらっていいかな?」 「受験に必要だから取って来いって先生に言われました」 「そっか、ちょっと待ってね」  無邪気にそう言うと、係りの人はすんなりと受け付けてくれる。  結局、大人なんて子どもが子どもらしくいれば何の疑いも持たない。  まさか目の前の私たちが――自分たちの血のつながりを証明するものがないか確認するために戸籍謄本を取ろうとしているだなんて、これっぽっちも思っていないだろう。 「お待たせしました」  私たちはそれぞれの戸籍謄本を受け取ると、市役所を出た。  近くの公園に向かうと、並んでベンチに座る。  そして――。 「それじゃあ、開くよ」 「うん」  私は手の中の用紙を開く。そこには――母の名前と、私の名前が書いてあった。けれど、父親の欄は空白だった。  そして、瑞樹は――。 「瑞樹? どうしたの?」 「俺のやつ、これって――どういう意味だと思う?」     
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