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そこには、瑞樹の今の両親の名前と悟という人の名前、そして瑞樹の名前が書かれていて……私の母の名前は記されていなかった。
「これって……つまり、俺の勘違いだったって、こと……?」
瑞樹の頬を涙が伝う。
「あの母子手帳の方が間違いで……俺は、父さんと母さんの子どもで、間違いないって、そういうことなんだよね……?」
誰に問いかけるでもなく、瑞樹はそう言うと……声を上げて泣いた。
私は――瑞樹の手の中の戸籍謄本を見つめていた。
東條悟――。確か一人っ子だと言っていた瑞樹に、兄だと思われる人の名前。
全てが、繋がった。
昨日、帰ってから調べた資料の中に、聞きなれない名前の単語があった。
特別養子縁組。
その制度を使うと、戸籍上はまるで実の親子のように記されると書いてあった。そこにはその子を産んだ母親の名前も父親の名前も存在しない。
もし瑞樹の今の両親が、自分の子の赤ん坊と、特別養子縁組を組んだのだとしたら――。
瑞樹の兄というその人は、本当は――。
「よかったね」
私は、瑞樹に微笑みかけると、両手をそっと包み込んだ。
「ホントに良かった。それに――これで私たちの間にも、何の障害もなくなったね」
「あ……」
私の言葉に、瑞樹はハッとすると……涙でぐしゃぐしゃになった顔を、袖口で拭った。
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