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「今までずっと悩んでいたことが、全て俺の勘違いだったことがわかったよ。……彩菜、君のおかげだ」
「瑞樹……」
「彩菜、好きだ……」
瑞樹はそう言うと、私の身体を抱きしめた。
カサっという音がして、瑞樹が手に持っていた戸籍謄本が地面に落ちる。
そして――風に舞って、どこかへと消えていく。
「あ……」
「もういらないでしょ、あんなの」
飛んで行った先を見つめていた瑞樹だったけれど、そうだねというと優しく微笑んだ。
「ね、さっきの」
「え?」
「もう一回言って?」
「――好きだよ、彩菜」
「私も好きよ、瑞樹」
私たちは見つめ合うと、触れるだけのキスをした。
それはまるで大人たちがする、誓いのキスのようだった。
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