第11章 呪念の応報

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 悔しげにきつく握ったこぶしを震わせる拝島の横に、いつの間にか現れたのか、梁井櫂斗が近寄るってきた。  おそらく、これまでのやりとりを物陰で見ていたのだろう。 「まさか、こんなことになるとはね。それにしても、輝耶様もひどい人だ。拝島さんがどれほど輝耶様のために尽くしてきたのか。それを考えたら、拝島さんに対してこんな仕打ちはできないだろうに」  梁井櫂斗の言葉に拝島はさらなる怒りをあらわにし、握ったこぶしを近くの壁に叩きつけた。 「くそっ! 稜ヶ院のやつ!」  側にいた他の弟子たちがびくりと肩を跳ね上げ、ここにいては、いらぬとばっちりを受けやしないかと恐れ、一人、二人、そして結局全員がこの場から逃げるように去っていってしまった。  残ったのは梁井櫂斗だけ。  梁井櫂斗は拝島の耳元に唇を近づけると、さらに、ささやくように言う。 「でも、仕方がないね。君は輝耶にとって一番弟子だったかもしれないけれど、一番のお気に入りにはなれなかった」 「なにっ!」 「稜ヶ院さんのせいだね。稜ヶ院さんがここに現れたから。ねえ、あいつさえいなくなってしまえばいいと思わない?」  じろりと拝島は梁井櫂斗を睨みつける。 「消しちゃいなよ」 「消す?」 「そうすれば、今度こそ輝耶様は拝島さんだけのものになる」 「俺だけのものに……」 「そう」  梁井櫂斗から放たれた黒いもやのようなものが、拝島赳夫の身体に絡みついていく。  まるで鎖のように。  梁井櫂斗はにたりと口角をつり上げて笑った。  膨れ上がっていく拝島の憎悪を利用して僕はさらなる力を得る。  さあ、稜ヶ院さん。  君はどうやって僕に対抗する?
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