プロローグ

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 昼食の時間帯も過ぎ、少しばかり人通りの混雑も落ち着き始めた午後二時。  駅前の通りをうなだれながら歩く一人の男の姿があった。  その足どりは頼りなく、時折すれ違う人と肩がぶつかっては男はすみませんと小声で謝罪をする。  見るからに気の弱そうな性格だ。  年齢は四十代半ば。  スーツを着ているところをみるとサラリーマンか。  さらに、この時間に外を歩いているということは営業か、あるいは他社へ打ち合わせに行くための移動中か。  どちらにせよ、まだ働き盛りであろう年齢であるにもかかわらず、男の姿は見た目も格好も疲れ切っている様子であった。  よれよれのスーツにしわの寄ったYシャツ。  折り目の消えたスラックスからのぞく、くたびれた革靴。  見るからに安物と思われるネクタイ。  手にした鞄もぼろぼろですり切れていた。  男は信号待ちのため横断歩道の一番前で立ち止まった。  すぐ横に学校帰りの小さな女の子が並んだのが男の視界のすみに入る。
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