プロローグ

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 男はため息をつき、手首を飾る天然石のブレスレットに視線を落とす。  石のことは詳しくないが、連なる透明な石に数カ所黒い石を挟んだどこにでも売っていそうなブレスレットだ。  なのに――。  こんなものが五十八万円とは。  男はもう一度ため息をついた。  何をやってもうまくいかないと自棄になり、たいして飲めない酒を飲み、つい友人に愚痴ったのがきっかけだ。  友人といっても大学のサークルで少しばかり会話を交わしただけで、卒業してからはそれっきりだったのだが、数日前、突然その友人から連絡をもらいじゃあ、飲もうかという流れになった。  友人は――はたして、その友人を純粋に友人と呼んでいいのかどうかも、今となってはあやしいが――もしかしたら霊的なものが絡んでいるせいで、ことごとく運気を遠ざけているのかもしれない。  腕のいいホンモノの霊能師を知っているから一度見てもらったらどうか? と至極熱心にすすめてきた。
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