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部屋の中では数十名の輝耶の弟子たちが床に座り抑揚のない声で何やら祈りのようなものをあげている。
それぞればらばらで、呟くような声のため何を言っているのか聞き取ることはできない。
その中に混じり、祭壇の一番前で君子さんも目を閉じ手を合わせていた。
冬弥がここに立ってきた本来の目的は、彼女をここから連れ出すこと。
『君子さん?』
彼女の幽体に呼びかけるように話しかける。
反応はない。
それどころか、冬弥の存在に気づく様子も。
冬弥はまぶたを落とす。
どうすれば、僕の声に耳を傾けてくれるようになるのだろうか。
彼女の魂に呼びかけることができるのか。
さらに、君子さんに近づこうと足を踏み出したところで輝耶に呼び止められた。
「冬弥、何をしているの? 打ち合わせをするわよ。こっちに来なさい」
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