プロローグ

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 最初は胡散くさいからと断った。  それでも友人は話を聞いてもらうだけ、自分も一緒に付き合うからと親身になって言うものだから、結局断り切れず、午後休をとってその霊能師に会ったのがついさっきで、会っていきなり〝良い運気を呼び込む守珠〟というこのブレスレットを買わされてしまった……というわけである。  今さらになってたぶん、いや完全に自分は霊能師に、さらに友人に騙されたのだということに気づく。  そういえば、友人の姿もいつの間にか消えてしまっていた。  電話をかけてみようかと携帯を手にするが、男は首を振ってやめた。  どうせもう繋がらないだろう。  それに、自分が騙されたという事実をまだ認めたくない気持ちがどこかにあった。  はっきり断り切れなかった自分の性格に嫌気を覚える。  かといって、ブレスレットを返品しに行く勇気もない。  ちなみに支払いは二十四回払いのローンだ。  とはいえ、ローンを組んだものの勤めている会社はいろいろあって今月末で退職をすることになった。  早い話がクビだ。  次の仕事も決まっていない。  どうやってブレスレット代を支払っていこう。  退職金もあてにならない。
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