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「お前には近づくなと言ってやったが……」
が、緋鷹龍月は目を細め、やれやれと首を横に振る。
「どうやら遅かったようだな。まあ、そのうちお前にもわかるだろう。そっちも少々面倒なことになりそうだぞ。おまえも覚悟しておけ」
僕に近づくなと、師匠が成海慧子に忠告?
どういうことだろう。
しかし、師匠がそう言ったのなら、何か特別な意味があるはず。だが、何がどう面倒なことになるのか冬弥には想像もつかなかっった。
『あの女が冬弥の回りをうろついていることじたい面倒なことだがな!』
と、孤月は吐き捨てる。
「冬弥?」
名前を呼ばれ冬弥は緋鷹龍月を見上げる。
「彼女のことが好きなのか?」
「好き? 僕が成海さんのことを?」
緋鷹龍月はにっと笑う。
「それは……」
「まあいい。おまえも無理はするなよ」
じゃあな、と言って、緋鷹龍月はこの場から去ろうと冬弥たちに背を向け歩き出す。
「緋鷹先生! 本当にありがとうござました!」
去って行く緋鷹龍月の背に美咲は深々と頭を下げると、彼は歩きながら片手を上げて応えた。
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