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吉田さんを無事見送り、さて自分たちも食事をとろうとしたあの日。
インターホンが鳴ったため、冬弥は椅子から立ち上がる。
「私のためにあのチーズケーキを取り寄せてくれたのか!」
はずんだ声をあげ、孤月が椅子から飛び降りる。
「そうだよ」
「冬弥大好き。大好きー!」
よほど嬉しかったのか、はしゃぎながら孤月がぎゅーっと腰に抱きついてきた。
「そんなに喜んでくれるなら僕も頼んだかいがあったね」
「うむ!」
背中に顔をうずめ、孤月はうんうんとうなずいている。
そんな孤月に笑いかけ、冬弥はインターホンに出る。
「はい」
「すみません。あの……」
冬弥は大学に通うかたわら霊障で悩む人たちのために心霊相談を行っている。
今はまだ学業優先のため仕事の宣伝はとくにしていない。
時折名刺を配ることはあるが訪れる相談者のほとんどが口コミだ。
それでもどこで聞いてやって来るのか、不思議なことに仕事はそこそこ舞い込んでくる。
まれに、嫌がらせも含めて同業者から仕事が回ってくることもあるが……。
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