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それで手続きをするように頼むと、ミラは、部屋の備え付けのベルを鳴らし、先ほど部屋に案内してくれた女性を呼んだ。
「リリー。リヒト様のカードの更新をお願いします。」
「承知いたしました。」
ミラが簡単な説明をすると、リリーと呼ばれた女性は、要領を得たらしく一礼をするとサッと部屋から出て行った。
「彼女はリリー・ノヴァ。私の義理の妹なのです。私が信頼をおくものですので、彼女が受付の窓口にいる際には、彼女の所へおいでください。」
ミラに茶をすすめられ、しばし雑談をする。
「しかし、ギルドカードというのは、なかなか高度な技術がつかわれているのじゃな。」
アスラも知りえなかったようで、とても興味深そうにしていた。
「はい。これも先の転生者がもたらしたものでございます。ギルドカードでの身分証、お金の預け入れ、情報の管理、ありとあらゆることがカードだけでできるようになりました。その方のご協力なくして、現在のギルドはないといっても過言ではございません。」
「俺には、提供できるものはないかもしれないけど。」
心配になり呟くと、ミラは微笑み
「情報の提供はなされなくても、問題はありません。してくださった場合、報酬がでるというだけでございます。転生者の方が、なぜこの世界にこられるのかは分かっておりませんが、いろんな世界、いろんな時代から来られていることは分かっております。元いた場所がどのような世界なのかによって、ご提供いただける情報が異なるのは当たり前のことですから。」
「元の世界に戻った人もいるのですか?」
リヒトの質問に、アスラもミラも目を伏せた。
「すまぬが、わしは知らぬ。まず、どういった原理で転生者が現れるのかもわかっておらぬ。お主が帰りたいと望めば、その方法を探す手助けはできるかもしれぬが、帰れると言うことはできぬ。」
アスラはとても歯切れが悪かった。
「戻りたいから聞いたわけじゃない。興味があっただけだから。」
戻りたいとは思わなかったが、戻れないと分かれば、やはりこちらで生き抜くしかない。その決意だけはできた。
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