7.- ASURA -

1/7
前へ
/54ページ
次へ

7.- ASURA -

リヒトとアスラは、ギルドを出て、買い物をするために街へ来た。 青と白の街並みは、港町ということもあって活気があり、物売る店員も、買物客も、表情明るく、買い物を楽しんでいるようである。 リヒトも、周りを物珍しく見まわしているようで、その様子を微笑ましく思った。 実は、アスラはリヒトが大金をもらった時の表情を密かに観察していた。貧しく、食べるものも困難であったであろうリヒトが、大金を手に入れて、どんな表情を浮かべるのか、その気持ちはどのようなものなのか、アスラは見極めたいと思っていたからだ。 お金というのは、人を狂わせる力があることをアスラはよく知っていたし、そういう人間もまた沢山見てきた。リヒトもまた、その様にお金の無心に取りつかれるのではないかと、危惧していたのだ。 だが、リヒトは大金を持つ手は震え、リリーに預けたときには安心している様子であった。そして、今も見たことがないであろう様々なものを見ても、決して無駄に浪費しようとせず、それらを眺めて楽しんでいるようであった。アスラはリヒトをますます好ましく思っていた。 「リヒト、必要なものは買わねば足りぬが、買いたいものはないのか。」 アスラが尋ねると、リヒトが困ったようにした。 「何を買えばよいのか、わからない。雑貨や食料は目につくけど、何を買いそろえたらよいのだろう?」 アスラはなるほどと思い直し、熟考するため二人で道端によった。 「そうじゃな。とりあえず、日常品としては、服と下着、それから靴や生活用品であろうな。あとは、戦うための武器や防具、持ち運べる道具達は必須である。この街にはあの店の本店があったな。あそこに行くぞ。」
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加