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7.- ASURA -
リヒトとアスラは、ギルドを出て、買い物をするために街へ来た。
青と白の街並みは、港町ということもあって活気があり、物売る店員も、買物客も、表情明るく、買い物を楽しんでいるようである。
リヒトも、周りを物珍しく見まわしているようで、その様子を微笑ましく思った。
実は、アスラはリヒトが大金をもらった時の表情を密かに観察していた。貧しく、食べるものも困難であったであろうリヒトが、大金を手に入れて、どんな表情を浮かべるのか、その気持ちはどのようなものなのか、アスラは見極めたいと思っていたからだ。
お金というのは、人を狂わせる力があることをアスラはよく知っていたし、そういう人間もまた沢山見てきた。リヒトもまた、その様にお金の無心に取りつかれるのではないかと、危惧していたのだ。
だが、リヒトは大金を持つ手は震え、リリーに預けたときには安心している様子であった。そして、今も見たことがないであろう様々なものを見ても、決して無駄に浪費しようとせず、それらを眺めて楽しんでいるようであった。アスラはリヒトをますます好ましく思っていた。
「リヒト、必要なものは買わねば足りぬが、買いたいものはないのか。」
アスラが尋ねると、リヒトが困ったようにした。
「何を買えばよいのか、わからない。雑貨や食料は目につくけど、何を買いそろえたらよいのだろう?」
アスラはなるほどと思い直し、熟考するため二人で道端によった。
「そうじゃな。とりあえず、日常品としては、服と下着、それから靴や生活用品であろうな。あとは、戦うための武器や防具、持ち運べる道具達は必須である。この街にはあの店の本店があったな。あそこに行くぞ。」
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