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部屋に入ると、一人の男性が、奥の机で何やら書類を作成しているようだった。
この店の主ゲルタ・クリケット。比較的若い男だ。父親からのこの男に代替わりし、この店はますます栄えるようになった。
「ゲルタ様。アスラ様とお連れ様をおつれいたしました。」
ギルがそう挨拶をすると、ゲルタはこちらを見、にこやかな笑顔を浮かべて、手間の応接テーブルの方へと歩いてきた。
その際、結界をはり、瞬時にデスク周りを不可視へと変えた。そこにあるのは観葉植物と歓談用のテーブルとイスのみが残されていた。
「アスラ様、ご無沙汰しております。ようこそ当店へ。そちらのかたは、もしかして?」
「うむ。リヒトという。リヒトの物を用立ててほしいのじゃが。」
「当店をお選びくださり、ありがとうございます。どうぞ、おかけください。」
三人が腰かけると、ギルが音もなくお茶を前に差し出した。
「うむ。相も変わらずの隙のなさじゃの。お主、やはり人間ではないじゃろ。」
わしが、ギルをほめると、ギルは微笑み、そして、ドアの近くへと控えた。
ゲルタが向き直り、こちらに礼をとる。
「リヒト様。お初にお目にかかります。クリケット商会のゲルタと申します。以後ごひいきに。」
「はじめまして。リヒトです。よろしくお願いします。」
「早速ですが、リヒト様の物を一通りご準備させていただいたらよろしいのでしょうか。」
「うむ。一通り頼む。」
それだけをいうと、ギルが一礼し、部屋の外へと向かった。
「今、ギルが準備をしておりますが、リヒト様の武器は何をご準備したらよろしいでしょうか。」
「おぬし、ギルがおらぬし、普段の話し方にせぬか?その言葉遣いは、気持ちが悪い。」
「え?いいのか。じゃあ早速。ギルがいるときに、この話し方をすると小言の説教が長いんだよねー。」ゲルダが砕けた口調で話しだした。
リヒトも少し驚いた様子だったが、場の空気が緩んだのが分かり、少し落ち着いたようだった。
リヒトにわしがゲルダと出会ったころの話をした。
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