7.- ASURA -

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わしがゲルダと知り合ったのは、ゲルダが幼少だった頃。父親-前主と共にわしの所に占いにやってきていた。その当時は中々の腕白坊主で、冒険者に憧れ、剣を振り回し、体力づくりと称しては鶏を追いかけて走り回ったり、採取だといっては、畑にある薬草や野菜を勝手に抜いてしまったりと、なかなかの悪戯小僧であった。 ゲルダの父は信心深い男で、商売の事でわしの話をよく聞き、とにかく実践するものであった。 前主最後の占いで「次代の荒波が来る。新しい風に身を預けよ。」と出ると、父は自分の持っているノウハウをゲルダに叩き込んだ。そして、その占いの後に、ゲルダは冒険者への夢を諦め、商会の主となり、前主は、腹心のギルを教育係として残し、買い付けという放浪の旅に出た。今でこそ、立派な役目をして居るが、ここにくるまでの心の葛藤や、道のりは平坦ではなかったのであろう。前主の後をついてまわった悪戯小僧は、もう昔の話になってしまった。 「それで、アスラ、リヒトの武器はなんにする?」 「うむ。そうじゃな。リヒトは、戦いとは無縁のところにおったゆえ。」 リヒトが驚いたような顔でこちらをみた。 「どうして、戦いとは無縁だと思った?」 「筋肉の付き方を見れば大体は分かる。速さを競う剣をつかうものは、全体にまんべんなく、斧やハンマーを使うものは、パワーが出るようにしっかりと、まぁ、魔法を使う者や、召喚術を使う者もおるから、一概に見分けがつくわけではないが。」 リヒトは納得したようだったが、両手を握り、うつむいた。 「俺でも、戦える武器があるだろうか。」 呟き声が聞こえた。
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