サラリーマンりゅうのすけ 5円があれば

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サラリーマンりゅうのすけ 5円があれば

 課長に大目玉を食らった。納期遅れの連絡ミスは、ぼくのせいじゃない。同じ営業部の係長、ぼくの直属の上司が、製造部から連絡を受けていたにもかかわらず、担当のぼくに、伝え忘れていたのだ。けれどもいまさら愚痴ってもはじまらない。ぼくは言い訳しなかった。課長はうすうす感づいているようだったが、係長は課長の腰巾着、何を言ったって、取りあってもらえなかっただろう。   と言うわけで、得意先にひとりで出向いて行って、謝り倒して何とか納期遅れを納得してもらった。先方の担当者に、ぼくが気に入られていたからかも知れない。出かける前に先輩から耳打ち。いまの係長は、部下の手柄は自分のもの、部下の失敗はもちろん部下ひとりのもの、自分の失敗も部下のもの。  今日はまったくもってついてない。朝から満員電車で御局風のOLに、ぼくのカバンが、逞しいおヒップに強く当たっていると目で指されて睨まれた。痴漢と勘違いされなかっただけでもありがたかったけれど。  かと思ったら、電車から降りていつもの通勤コースを歩いていると、企画課のマドンナ、美咲ちゃんが、総務課のいけ好かない係長ーぼくはどうも係長と言う種族と馬が合わないーの山田のやつと、楽しそうにおしゃべりしながら歩いているのを目撃してしまった。美咲ちゃん、あんな非情なやつが好きなの? はあー、今日は一日中、暗い気持ちで過ごさなければならなくなったところへもってきて、例の課長の大目玉。暗いどころか、いっぺんに真っ暗になってしまった。  
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