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「鈴、遊んでないで早くしてくれ」
「おや、それが人にものを頼む態度かい?旦那」
「人って……お前、猫だろうが。ていうか、猫又」
「おっと、そいつぁ違うんじゃありません?旦那。
猫又だろうが何だろうが、人の形をして人の言葉を話していれば、そいつぁ猫よりも人に近い存在だとは思いませんかい?」
「……ああ、もういい。口でお前に勝てないことはよく分かってる。
どうか俺の代わりにこの子を成仏させてあげて下さい、お鈴様」
面倒くさそうな顔をしながら、男は鈴に頭を下げた。
それを見下ろしながら鈴は呆れた顔を見せる。
「何だい、その仏頂面とからくり人形みたいなつまんない物言いは。
まったく、何でこんな旦那の相方になっちまったんだろうねぇ」
「何だと?俺だってもっと素直な相棒が欲しかったっつーの!出来れば“人”のな!」
それを聞いてて英太は思う。
こんな綺麗なお姉さんなら、人じゃなくても有りなんじゃないか、と。
そして、どうにも男の方が鈴に弄ばれてる感じが否めない、と。
「やれやれ。怒りっぽい男は女に振り向いてもらえませんよ。
まぁ、からかい甲斐はありんすけどねぇ」
袂で口許を隠しながらコロコロと笑う鈴の姿は、気品を纏いつつも小悪魔的魅力を感じさせた。
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