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「…………すげぇ……」
「……………………」
思わず感嘆の声を漏らす松岡。
そして目の前に居ても何が起こったか把握出来ていない英太。
二人の目には唯、突然に悪霊達の胴が真っ二つに分かれ、気が付いたら太刀を振り終えた後の黒鬼が英太の真ん前に忽然と現れた……そんな感じに見えていた。
「やれやれ、つまらねぇもん斬っちまったな……おい、渉。お前その霊障の痕、どうすんだ?」
「……あ、ああ。家に帰って清めれば元に戻るから大丈夫だ」
「そうか。んじゃ俺はこいつ等連れて、ちょっと地獄に行ってくるわ。放っとけばまたくっついて操られ出すからな……あいつに」
そう言って、未だに木の陰に隠れている覚を睨む黒鬼。
悪霊達に関しては、浄化が出来ない以上、身柄を拘束して地獄に連行するしか無い。
これもまた獄卒の仕事の一つの為、黒鬼は当然のようにその長い太刀で、離ればなれになったままの悪霊の体を串刺しにしていく。
「いや……焼き鳥みたいになってるけど?しかも分かれてるから計6塊ぶっ刺すとかエグいな…………」
さすがに松岡も英太もこの光景を眺めて青い顔になっていた。
姿は人とあまり変わらない黒鬼だが、こういった部分はさすが地獄の住人なのだな……と、妙に納得させられてしまう。
「……うん、でもまぁ分かった。それじゃ黒、よろしく頼むよ…………って、ちょっと待って?お前が行ったら、あの覚っていう妖魔はどうすんだよ!?」
「あ?知らねぇよ。まぁ鈴姐さんが居るんだから大丈夫だろ。……つっても気まぐれだからなぁ…………いざとなったらまた呼び出せよ。戻って来られるようなら戻って来るからよ!」
「おや。言ってくれるねぇ、黒。あんただって戻って来られやしないだろうに。悪霊となっちまった亡者の手続きは結構煩雑だからねぇ……小一時間は彼岸に行きっぱなしになっちまうんじゃないかい?」
「そうかもな……ま、そん時はどうにかしてくれよ!それじゃあな!」
そう言って背を向けた黒鬼に対し、「……勝手だねぇ」と鈴はわざとらしく溜息を吐いてみせる。
……勿論、そんな鈴に自らの普段の振る舞いを省みる素振りなど、微塵も見られる筈も無かった。
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