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黙って聞いていた英太が気になった事を鈴に尋ねてみる。
「あ、あの、鈴さん。さっき言ってた妖が増えているのも人間の所為っていうのは?」
「妖には大きく分けて、二種類ありんす」
「二種類?」
「そう。自然に生まれた妖と、念から生まれた妖……でござんす」
「ああ……聞いた事があるな」
「そりゃねぇ、渉は社会人研修の際に習っておいでの筈だからねぇ」
むしろ忘れられては困るとばかりに、鈴は松岡を横目でじろりと見た。
「例えば河童なんざは自然に生まれた者……まぁ生物が変異したものと言って良いのだろうねぇ。動物に限らず植物から派生した妖も居るからねぇ。尤もそいつらは本当に妖精と呼ばれている訳だけれども……まぁ妖怪も妖精も結局は妖には変わり無いってぇ事さね」
くすくすと笑いながら鈴は続ける。
「も一つ、念から生まれた方は……わっちやさっきの覚なんかはそうだねぇ。覚にどんな念が有ったのかなんざ知りゃしやせんけど……訳有って長く生きた者、強い怨念が具現化したもの、何かに執拗に執着したもの……そういった類いが妖へと成るのさ。でねぇ……渉、英太。人ってぇのは随分と感情豊かな生き物じゃあないかぇ?そんな感情に溢れた人が増えていくにつれ、人そのものの念や人と関わった他の動物の想いってぇのが新たな妖を生み出していくのさね。だから妖を増やしているのは人間自身。そしてそんな念で生まれた妖は感情的で理性に乏しいのが殆ど。だから妖魔に堕ちやすいって部分もござんすしねぇ」
「「……………………」」
「ま、さっきも言いましたがねぇ、渉。それでも妖魔に同情は無用でござんすよ?奴らは秩序を乱す者。きっちり粛正しませんと後が大変になるばかりですからねぇ」
「……………………」
すぐに返事の出来ない松岡。
妖魔に対してまだまだ理解が足りなかった事を痛感すると共に、素性を知る事で妖魔を退治するのに迷いが生じていた。
しかしそんな松岡の心情を見て取った鈴は言う。
「ま、渉はそんなに悩まれる必要なんざござんせんでしょ?」
「?」
「元々妖魔を退治する程の腕など持ち合わせちゃござんせんからねぇ」
「なっ……うおっ!?」
鈴に馬鹿にされ、言い返そうと横を向いた時。
松岡の背中に何かが凄い勢いでぶつかってきた。
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