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「……結局、渉って呼ぶのは決定なのか。まぁ……旦那呼びよりはマシだけどな。
朧車はお前が阿部さんを脅かして高笑いしてる間に呼んどいたんだよ」
「え?どうやって?」
思わず会話に参加してしまった英太は慌てて口を押さえた。
だがしかし、口を出すのも無理は無い。
英太が見ていた限り、松岡はずっとそこに居たし、何処かに連絡していた気配も無かったからだ。
「ああ、それはまぁ……俗に言う、“幽体離脱”ってヤツだよ」
「…………幽体離脱」
「ああ、実際人間の体っていうのは只の容れ物だからな。練習すれば英太だって出来るようになるぜ?」
そう言って笑う松岡の冗談に、英太は目を丸くしながら慌てて首を横に振る。
そんな英太の様子に松岡は更に笑い、祐実の霊気も増々明るさを帯びた。
祐実の霊気の変化は英太も嬉しく思ったが、松岡の言葉に疑問も浮かんだ。
その離脱した幽体は一体何処に行っていたのか?
そして、何処ぞに呼びに行っていたとして……そんな短時間で行って戻って来れるものなのか?
声に出してその疑問を松岡に投げ掛けようとした時……松岡が呼んだという朧車が、英太の背後で地鳴りのような音を鳴らしながらアスファルトの上に降り立った。
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