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異形の者2名が何処へと消えた今、この場に居るのは一応見た目は特に問題の無い者達。
…………その内、一人は時代錯誤な絢爛な衣装を纏い、また一人は白目を剥いて気絶しているが。
しかし、英太が最も気になっているのはそのどちらでもなく…………一仕事終えた感を出している若者、松岡の事だった。
勿論、祐実を乗せた朧車がどこへ消えたのかという当惑の気分も抜けてはいなかったが……それよりもこの男。
普通そうな見かけでありながら、全く普通でない事だらけ。
只の派遣社員が……幽霊と交信?
あの世へ留学してた?
猫又を飼っている?
意図的に幽体離脱?
しかも化け物を呼べる?
そして、幽霊の念を断ち切る力?
そんな特殊でオカルトな、まるで作り話の中の世界のような背景を持ちながら…………接してみれば気さくで優しくて、女性に対して不器用で、しかも臆病者ときている。
親しみ易くてつい心を許してしまいそうな安心感が、彼の特異な事情などを二の次に思わせてしまう。
理解しがたい側面を何面も持っていながら、尚も悠然としている松岡は、英太はとって興味と畏れの対象と成っていた。
「ん?どうした?英太」
無意識ながらも余程見詰めていたのだろう。
松岡が英太に笑顔で尋ねた時…………そんな二人の足許を、一筋の白い影が走り抜けた。
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