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この蒸気のようなものは浄化された負の霊気。
それが異様に多い。
そして鈴が言う、自殺の名所。
それらを総合して考えた時、英太はこの夥しい手の群れが全て自殺者の手なのだと知った。
それもダム湖に引き摺りこもうとしている事から、皆……入水自殺。
不思議な光景に慣れきった英太の感覚に、急に現実感が押し寄せる。
と共に、その負の霊気を散々吸い込んでしまっていた事に気付く。
押し寄せる悪寒と吐き気。
最後の手が浄化されたと同時にへたり込むと、英太はその場で嘔吐した。
「お、おいおい!大丈夫か?英太!」
息を切らしながら松岡が声を掛けると、英太の背中を摩りながら鈴を睨んだ。
「鈴!余計な事言うんじゃねぇよ!」
「おや。何も間違えてはありませんでしょ?」
「そりゃ間違えてはねぇけど!正しいとか間違えてるとか、そういう事じゃないんだよ!……これだから猫又は…………」
「……ほう?これだから猫又は何だってありんす?」
「無神経だって言ってるんだよ!」
「おやおや。言ってくれるじゃあありませんか。そうやってすぐにわっちを物の怪扱いする渉の方が無神経ってもんじゃあありませんかねぇ?」
「実際、物の怪だろうが!」
交わす言葉の棘に、鋭さと荒々しさが増してきている事に気付く英太。
治まらない気持ち悪さに苛まされながらも、傍らに居るシンと共に二人のやり取りを心配そうに眺めていた。
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