猫と派遣社員

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「あ、あの…………」  険悪ムードが和らいだ様子を見て、英太が()()ずと声を掛けた。  体調も気分も最悪だったが、訊いておきたい事が二つ程有ったからだ。 「お?大丈夫だったか?英太。  悪かったな、鈴が変な事吹き込んじまって」 「変な事って、事実でござんすよ」 「五月蝿い!黙ってろよ」 「あ、あ、その……すいません、俺は大丈夫ですのでそこら辺で…………」 「ほら、大丈夫って言ってるじゃあありませんか」 「こんな青い顔して大丈夫な筈無いだろ。  あ。それで英太。さっき何を言い掛けた?」  松岡がしゃがみこんで心配そうに英太の顔色を窺う。  足許には英太の吐瀉物が飛び散っていたが、そんなものを気にする素振りも見せない。  英太は思った。  鈴に対してはキツい態度を取る松岡だが、きっと人間にはとても優しいのだと。  それは初めて話した時にも感じていた事だったが、その後からもずっと自分を守ってくれているし、幽霊であった祐実に対しても親切だった。  何故鈴にだけ?とは思うが、さっき鈴が“物の怪の類いを忌み嫌っている”と言っていたのをを思い出す。  ……何か事情が有るのかもしれない。  そうは思ったが、それは今尋ねる事では無かった。  そんな松岡の個人的事情よりも、先程から訊きたかった件を英太は口にした。 「あの……さっき渉さんが言ってた、俺を巻き込んだって……どういう?」
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