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腹立ち紛れに自分を睨んでくる松岡の視線に気付いた鈴は、あまりに開けっぴろげに笑っている自身の姿を思い出し袂で顔の下半分を隠す。
しかし顔半分が隠れても、笑いすぎて目尻から溢れる涙と震える肩は抑える事が出来ない。
質問の回答を待つ英太と、その回答を説明出来ない松岡は、そんな鈴をじっと見つめていた。
「あぁ、苦しい。折角三百年も生きたというのに、渉に笑い死にさせられる所だったでござんす。…………ん?何でありんす」
やっと一頻り笑い終えた鈴が自分を見ている四つの目に気付くと、松岡が拗ねたように呟く。
「……鈴、お前から説明してやってくれ」
「あぁ!そういえばそんな話でござんしたね!本当、何だかんだで渉はわっちが居ないとまだまだでありんすねぇ」
「……っ」
悔しそうに歯噛みする松岡の姿に、英太はおろおろと慌てる。
まさか自分の質問がこんな波紋を呼ぶとは思っても居なかった為、少しばかりの責任を感じていたからだ。
「まぁ落ち着きなね、英太」
英太の様子に苦笑しながら宥める鈴は、そのまま説明に入った。
「英太、あんたがあのお嬢さんを視たのも、そして今怨霊達に引き摺り込まれようとしていたのも、偶然じゃあ無いって事さ。」
…………偶然じゃ……無い?
「つまりだね。あんたとそこの犬っころが散歩していた時に、その近くには既に渉とわっちが居た。…………彼岸と此岸の狭間で生きる事を宿命付けられた者と人外の者……そんな二人が近くに来れば、普段あの世に縁の無い輩も自然と狭間に引っ張られちまうってもんさ」
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