猫と派遣社員

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 その幽霊が形作っている顔は確かに女性だった。  …………そして随分と美形のように、英太の目には映った。 「女子高生ってヤツだねぇ……。まぁ、随分と今の時代の雰囲気とは違う様だし……二十年は前の子じゃあないかい?」  背後から淡々と、他人事のように話し掛けてくる声には、相変わらず妙な艶が含まれている。  女子高生?  言われてみれば、どことなくそう見える。  肩まで切り揃えられた髪や、少し……いや、結構短めのスカートにルーズソックスまで。  見ようと思えば、それはどんどんと英太の視界の中ではっきりと形に成っていった。  そして……その子はまた(かぶり)を振った。  それを見て男は困ったように首を傾げた。 「誰か待っているんですか?」  その男の推測に、女子高生の霊はゆっくりと首を縦に振った。  誰を待っているのだろう?  ……二十年以上も。  その疑問は英太だけでなく、霊に話し掛けている男もまた思ったことだった。  こんな所で一体誰を待つというのだろうか。  せめて口を利いてくれれば聞き出せるのに…………そう男二人が考えていた所で、また英太の背後から声が聞こえてきた。 「嫌だねぇ、これだから男ってぇ奴は。鈍いったらありゃしない。  いいですかい?旦那。女がこの世に未練を残す程に待ち焦がれてる相手なんて、好いた男に決まっているじゃあありませんか」
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