すれ違い

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すれ違い

 過ぎ行く電車のモーター音を聞きながら、僕は階段をあがる。前を歩く人は、ゆっくりと階段を上がっている。手元を見てみると、スマホを持っている。どうりで遅いわけだ。  東京の大学に通うようになって、僕の歩くスピードは速くなってしまった。この前、地元の友達と久しぶりに会って、カラオケにいったのだが、そのときに言われたのだ。 「前はおまえ、結構とろかったのに、いつのまにそんなに速くなったんだ?」  東京の人は、本当に歩くのが速い。一番最初に東京に行ったとき、向こうから来る人よりも後ろから来る人の方が僕にぶつかってくるのだ。みんな黒いカバンとスーツを着て、忙しそうに歩いて行く。暇な大学生とは大違いのようだ。  階段を登りきって、乗越し精算機の前を過ぎると、すぐそこに自動改札がある。僕は何人かのことを追い越して、スマートフォンをポケットから取り出した。スマホケースに定期を入れてあるからだ。  しかし、自分の三人ほど前の人が、改札に引っかかった。東京ではよくあることで、もう慣れてしまた僕は、スピードを緩めることなく、左側の改札に進路をかえる。     
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