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テンポ良く言葉を投げ合う二人の声を何とはなしに聞いていると、成島に名前を呼ばれた。胸元にメノウ様を掲げて、ささやくような調子で、だけどはっきりと耳に残る声で。
「園田、大丈夫だった?」
「……何が?」
何を指しての大丈夫なのかわからなくて聞き返すと、「寂しくなかった?」と笑った。
しんとした、静かなのに、熱を灯すような笑み。それから、ひどくおだやかな調子で、とても丁寧な声で続ける。
「ひとりきりで部屋にいて、誰とも連絡取れなくて、外に出られなくて、園田が寂しかったんじゃないかって、心配だったんだよ」
痛ましい響きは一つもなかった。哀れむ調子も、同情もない声で、ただ真っ直ぐと心配だった、と成島は言う。続く言葉は、とてもおだやかだった。
「自分が悪かったんじゃないかって、自分が悪い子だったんじゃないかって思ってないかなって、心配だったんだよ。ねぇ、メノウ様?」
染み入るような声だった。俺は咄嗟に言葉が見つからなくて、何を言えばいいかわからなかった。
寂しくなかったか、と聞かれたなら寂しくなかった、と答えられる。だって俺は本当に、寂しいとは思わなかったから。
ひとりきりでいることも、外に出られないことも、連絡を取れないことも、それは俺が悪かったからで、寂しいと思うようなことじゃないと思ってたから。
だから、寂しくはなかったと答えられると、思ったんだけど。
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