「夏の声」 : 本編のあと、夏休みに入った直後の四人の話

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「……寂しくなかったよ」  ゆっくりと成島に返した言葉は嘘じゃないし、全くの本心だ。だけど、最初に思ったこととはわずかに意味が違っている。 「成島が心配してくれたし。遠山は一緒に来てくれたし。仁羽はスイカくれるって言うし」  今ここで、あの夜につながる人たちが、昼間の太陽の下で、あの時と同じように名前を呼んで、笑っていてくれるなら。  同じ道を歩いて、同じ場所を目指していられるなら。  もしかしたらあの時感じていたかもしれない寂しさとか、そういうものは全部、消してしまえる気がするんだ。  心の中に溜まっていたものとか、よどんでいたものとか、そういうものはきれいになくなってしまう気がするんだ。  こんな言葉でいいのか、答えとして合っているかはわからないけど、本当にそう思う。  成島は俺の答えに「そっかー」とうなずいて、「それならよかった!」とメノウ様に報告している。  深く理由を問うこともなく、何かの根拠を求めるのでもなく、当たり前のように受け取って、前から知ってたみたいな顔で納得してくれている。 「じゃあ、やっぱりお祝いしないとね!」 「……何の?」 「園田が寂しくなくてよかったねってお祝い」     
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