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だって、呆れてるような顔はしてるけど、怒ってるわけじゃない。眉をしかめているけど、止めさせようとしてるわけじゃない。
「仁羽からせっかくたくさんスイカもらえるんだし、すっげえ楽しんじゃってもいいんじゃない?」
夏休みなんだし、と付け足しながら、そうだな、と思う。
そうだ、夏休みは始まったばっかりなんだ。やらなきゃいけないこともあるし、どうせまた学校だって始まるけど。
それまでの夏休みを、目いっぱいに、思う存分楽しんだっていいんだ。
いつか終わる時間だって、今この瞬間を、力いっぱい楽しむことは、全然悪いことじゃないはずだ。
仁羽は俺の言葉に肩をすくめて、少しだけ笑ったみたいだった。
見つけにくいけど確かに刻まれた、はっきりとした微笑み。それはたぶん、わかりにくいだけで何よりも確かな、仁羽からの答えなんだろう。
「それじゃテメエら、さっさと歩けよ。あいつ、もうすぐ着く時間だからな」
思考を切り替えた仁羽がはきはきと告げる言葉によると、親戚の人はそろそろ仰木公園に到着するらしい。
マジで、待たせちゃうじゃん、と思ったけど仁羽は別に気にしていないみたいだ。むしろ「待たせとけばいいんだよ」とか言っている。
「ええ、でもスイカくれる人なんだよね? 待たせたらだめだよ!」
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