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「小景――冬」 : 冬の話(SS名刺メーカー)
空気がずいぶん冷たくなった。指先がかじかんで、鼻の頭も赤い。深呼吸をすると、肺まで凍えてしまいそうだ。
焼き尽くすみたいだった太陽も、アスファルトに落ちるハッとするほど濃い影も、熱の塊に覆われていた空気も、今は何もかもが遠い。
夏の気配は欠片もなく、全ては冬の景色に塗り替えられる。まるで別の世界になってしまったみたいに。
だけれど、どれだけ景色が移ろっても、あの夏が遠くなっても、変わらないものも知っていた。
今日も明日も明後日も。夏を越えて、秋を過ごして、冬を迎えても。俺たちは、同じ景色を過ごしている。
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