第2章 このひと時に幸せを

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第2章 このひと時に幸せを

「........起きろ......」 かすかに残る意識の中で、誰かが話しかけてくる。 (いったい誰だ...?) 聞き覚えのない掠れた低い男の声。いや、この場合、老人の声といったほうがいいか。 まるで直接、頭の中に話しかけられるような不思議な感覚。初めての出来事だ。 「......さっさと起きろ.......」 (本当に誰だよ.......お前.......) 直接的な疑問を投げかける。 だが、返答がない。 (なんだよ.....結局ただの.....夢か......) 夢。自分ではそう思っていたが、果たしてこれは本当に夢なのか。 水の中にいるかのように体が浮かび、自由に動くことができない。 (.......いや......本当に夢なのか.......) 不安に思った瞬間、目の前に白い光が差し込んできた。 それはまるで、深海を照らす太陽のような。暖かく、心地よい光 (あぁ、気持ちいいな........このままずっと......ここにいたい......) 少年は、ゆっくりと目を閉じた。 バン!!!!!! 強烈な炸裂音が鳴り響いたと同時に、意識が覚醒する。 目の前には、黒板を背に、眼鏡を掛けた真面目そうな女教師が今にも怒らんばかりの表情をして立っている。 その右手には白いハンドガンが握られている。 炸裂音の正体はこれだ。銃口の向きを考えると、こちらに向かって発砲したのが一目でわかる。 恐る恐る左後ろを確認する。そこには、壁の奥までめり込まれた弾丸があった。 「ライト君....あなた今までに授業中に寝た回数わかりますか?」 銃を構えながら、震えた声で聞いてきた。 これには流石に応えないとまずい。 「えっと........2、3回くらいですかね?」 ぎこちなく、応えるその様は、反省の意図が全くみられなかった。 「23回よ!!!!!」 バン!!!!!! ここで、また少年の意識は一旦、終わりを迎えた。 「ははははははッ!天才のくせしてやることは馬鹿だね~」  少年はめざめると保健室のベットにいた。  隣には眼鏡をかけた若い男性が座っている。こいつこそ、この学園の長たる学園長の座に就くエルリック・ローゼンだ。 「しかもあの美恵ちゃんの授業で居眠りをするとはなかなかの度胸だね」  
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