とある滅びゆく国の小学生

8/10
前へ
/10ページ
次へ
 きょうかんは泣きながらわたしに言いました。わたしも、きょうかんといっしょにたくさん泣きました。  その後、きょうかんはほんぶにほうこくしてくるといって、歩いて行きました。わたしたちは、歩いて自分たちのへやに帰りました。  いまこの日記は、だれもいない、一人のへやで書いています。きのうまでは、日記はあきちゃんと一緒に書いていたので、とてもさびしいです。  これで、わたしたちのきちにいる同い年の子は、いなくなってしまいました。わたしは、いなくなっちゃったそんなひとたちの分までがんばって、てきをぶっころしてやろうと思っています。あしたからも、がんばりたいと思います。 ◇ ◇ ◇ 「森田、入ります」 「おう、入れ」  鉄でできた重い扉を俺は開けた。やすい作りの机とイス、そして二組の棚があるだけだ。電気が通っていないので、窓から入ってくるのは沈みかけの太陽だけだ。 「今日、第一部隊の田端指令がなくなり、我々の部隊をふくめ三名の子どもが亡くなりました」 「……そうか」 「あと、もしかしたらスパイがいる可能性があります。田端指令は待ち受けを受けていたのかもしれません」  山中総司令は窓の外を向いたまま静かに答える。その背中は、どこか寂しげにも見える。 「あの、総司令……、ひとつ、聞いてもよろしいでしょうか」     
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加