とある滅びゆく国の小学生

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「……ああ、なんだ」 「もはや我々の国は……その……大変言いづらいのですが、……もはや、我々に勝ち目はないのではないでしょうか」 「……」  総司令は窓の外を見続けている。 「昨年から、我が街はほとんど機能を失ったままです。人口も二桁まで落ちており、さらにそのほとんどが子ども。戦闘ができる大人は、もはや我々だけです。もはや戦闘さえも子どもに頼らざるを得ない状況に陥っています。それでも、この戦闘を続ける意味はあるのでしょうか」 「……それは、あいつらが言ったのか」  総司令が口を開いた。 「あいつらとは」 「部隊の子どもたちのことだ」 「いえ、私個人の考えです。やはり忘れてください」  たぶんこれはふれてはいけない話だ。あまりこのことを考えすぎると、俺もおそらく死んでしまうだろう。 「失礼します」  俺は一礼して、その場をあとにすることにした。 「森田、この国にはスパイがいると思っているか?」  ずっと黙っていた総司令が口を開いた。 「……いえ、正直いないと思います」  人口が少ないこの国にスパイを潜り込ませても、すぐにばれてしまうだろう。 「私もそう思う。こんな国、スパイなんていなくても簡単につぶせるだろう」 「総司令、私はそこまでは……」     
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