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ウチカフェにするしかなさそうだ。結菜が見るからにガッカリしたのがわかったのだろう。
可愛いエプロンが全然似合わない大男は慌てて「少々お待ちください」と、厨房に声をかけている。せめて本気でかけらもないか確認してくれているのだろう。いい人だ。
「お待たせしました。お客様、少々お時間を頂いてもよろしいでしょうか」
「どのくらい?」
「30分ほど……」
一瞬、彼が人懐こい大型犬に見えた。
「はあ……まあ、大丈夫ですけど」
「では、直ぐに作りますので!」
大男は厨房もこなすらしい。確かネットで調べたら、ここのマスターは女性で、料理も全て手がけていると書かれていたが、彼はその手伝いだろうか。
待つのは苦にならない。元々、ここで少し本を読むつもりだったので、文庫本を持ってきていた。
ゆっくりとお気に入りの小説を読み返しながら待っていると、
「お待たせいたしました!」
大男……名前は真田さんが運んできたのは、小さなカップケーキ。でも、ちゃんとチーズケーキだ。
「わあ、チーズケーキ……」
「すみません、簡単に作ったもので……お店で出しているものとは比べものにならないのですが」
真田は大きな背中を申し訳なさそうに丸めて、可愛らしいお皿に乗せたカップケーキをテーブルに乗せた。
カップケーキはとても可愛い。こんがりきつね色のいい色合いに焼けていて、まだ温かく、ほっこりと割れる。
「美味しい」
思わず素直な感想が漏れると、真田は顔を真っ赤にして喜んでいるようだ。
「なんか、さっぱりしてる?」
「あ、そうなんです。クリームチーズがもう在庫が無くて……代わりに水切りヨーグルトで作ったので……」
「へぇ……でも、ちゃんとチーズケーキの味……」
まあ、発酵の仕方が違うだけで元を正せばチーズもヨーグルトも牛乳だ。結菜は水切りヨーグルトも大好きで、自宅でも寝る前に仕掛けて朝食に食べては幸せを感じている。
「美味しい……」
「あ、ありがとうございます……お客様にこのような代替えで申し訳ありませんでした……」
「ううん、すごく美味しい。ちゃんとメニューになるんじゃ無いですか? 次も食べたいです」
中身を考えると、チーズケーキではなく、ヨーグルトケーキだが。
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