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何をどうすれば、正解だったのだろう。
どこから、間違っていたのだろうか―――。
空を見上げて奥歯を噛みしめる大和の頬を、雨粒が伝う。彼の心の奥底で眠っていた、押し殺していた思いが、膨れ上がる。
おとなしく母の、父の言うことを聞いて生きるべきだったのだろうか。―――そんなもの、答えは否だ。そんな人生に、何の意味がある。そんな、人の意思に沿っただけの人生になんてきっと意味はない。
ならば、子供なんて生まれなければいいとすら思う。大人が子供を操り人形のように使い、言葉巧みに子供の意思を塗り潰すなど、そんなことをするくらいならば、子供が生まれてくる必要などないのだから。
『生まれたからには、意味がある。』
そんなことが書いてある本を、小さな頃どこかで読んだことがあった。それがまだ子供だった大和の頭の中にとても強く残って、そして何よりも、心に響いた感動が強くて、それを純粋に信じていた。
自身にもきっと何か、誰にも出来ないようなことが出来るようになるのだと。
そんなひたむきで純粋な思いが、確かにあったのに―――。
〝あなたも、お兄さんのように品行方正に生きなければなりませんよ〟
また、大和の頭の中に母の言葉が蘇ってきた。腹の底が無性に熱くなったような気がして、思いきり背中を預けている壁を拳で殴りつける。金属板の悲鳴が耳元で轟き、鼓膜を刺激する吐き気のする反響音に、大和は嘔吐感と後悔が入り混じり、情けなくなってため息をついた。
「なにしてんだ、俺……馬鹿じゃねえの……」
何回でも考える。
自身はどこで間違えたのか、と。
考えても考えても、答えなど出ないくせに。
結果腹が立って売り言葉に買い言葉で喧嘩を始め、最後に残るのは痛みだけ。
悔しくて、情けなくなる。
「はっ……」
鼻で笑い、強がりながらも、雨に打たれて体温も下がり、もう大和の意識は朦朧とし始めている。雨粒のせいでか、それとも疲れか、痛みからか、原因すらわからない。
ここで寝たら、どうなってしまうのだろうか―――。
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