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雨の夜、男の元に訪れる女があった。男は女を迎え入れ、褥を重ねることとなった。女の肌はしっとりと吸い付くように滑らかで、男は女を抱くことで大きな悦びに包まれた。しかしその後眠りにつき、朝気がつくと女はいなくなっていた。
その後、雨の夜には女が訪れ、気がつくといなくなっていることが続いた。逢瀬を重ねる毎に男は女を深く愛するようになり、できるならば添い遂げたいと思うようになった。
しかし、ある日を境に女はぱったり現れなくなった。雨の夜の度に男は今宵こそと気持ちを高ぶらせていたが、二度と女と会うことはなかった。男は深い悲しみに陥ったが、女は名前も居場所も頑なに口にするのを拒んていたため、如何ともし難いままだった。
過日、男への恋しさに雨を待ち切れず、乾いた夜に彼の元へと向かい、力尽きて家の前で干乾びた蛞蝓を、自身が踏み潰したことを男は未だ知らない。
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