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カレシが欲しい
「カレシが欲しい」
静かな高校の図書館で禁帯出の植物図鑑を眺めながら、ぽつりと百華は呟く。隣には友人の夕紀が、恋愛小説を読んでいた。
「カレシ? へえ、百華がカレシねぇ……。急にどうしたの?」
友人たちの間で、百華の男子嫌いは有名であった。曰く、背の高い人に見下ろされるのが怖いと。曰く、昔傷つけられた相手が男子だったと。曰く、日常的に自分の知らない世界に生きているからと。
二つ目以外は女子でも変わらないような人は沢山いるだろう、と夕紀は思うが百華にとっては大きな違いらしい。
「どうって……。ううん、何もないよ」
百華は普段から自分のことをあまり話さない。夕紀がどれだけ聞こうとも、それ以上を百華が語ることはなかった。
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