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そして、彼は病院を退院した。
リハビリの為に通院しなくてはならないが、集中治療室で眠っていた頃が嘘のように回復し元気になった。
私は彼が乗る車椅子をゆっくりと押し、タクシー乗り場に向かった。
見送ってくれた看護婦さん達は、私の事を奥さんと呼んでくれた。
彼の記憶は、まだ戻っていないようだ。
これから、彼と彼の本当の妻だった妹が暮らしていた家で、私が彼と暮らす事になる。
妹には申し訳ないが、私にとって彼は大切な存在になりつつある。
私は彼と暮らせる事に、喜びを感じている。
家にある妹のものは全て軒下に隠した。
彼の会社にはまだしばらく休みをもらっている。
私が妻でない事は、当分バレないだろう。
バレそうになったら、その時にまた嘘をつけばいい。
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