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あまりにもこちらに関心を示さない猫だったので、飽きてしまい自分の世界に入り込む。
雨が地面に落ちる音も、周りの木々の葉を濡らす音もまた心地よくて、聞き耳を立てているうちにウトウトしてきた。
またガサガサという音が聞こえて目を覚ますと、目の前に眩しいくらいに真っ白な袴を着た男の人がいた。
『雨宿りかい?これをどうぞ』
渡されたのは巨大なサイズのフキ。普段食べる茎も、自分の足より太い。
『ありがとう』
受け取って、傘のようにさす。フキの葉っぱに落ちる雨音を聞いているとまた眠気がやってくる。
はっと目を覚ますと、雨は止んでいる。猫もいない。男の人もいない。けど手には巨大なフキ。
その後、不思議なことにその森のなかにいる間は雨に降られることはなくなった。
どこからどこまでが夢?どこからどこまでが現実?
あの男の人は木の精霊なのか、祠の中の神様なのか、猫又なのか……今でも分からない。
願わくば、またいつか会ってゆっくり語り合い、子供の頃のお礼を再度言いたい。
雨が降る度に思い返す。
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