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雨が降ると思い出すのは、田舎のおじいちゃんとおばあちゃんの家でのこと。
小学生になるかならないか、くらいの時のこと。
母方の実家があるその田舎には、毎年ではないけど泊まりがけで行っていた。
木と林と森と山と。一言で言えば『緑』なのに、どれも違う『緑』が不思議で、そして美しくて。魅入られた自分は、本当に何もない田舎なのに毎日裏山に行っていた。
鳥の声、虫の声、そして風に吹かれてざわめく木々の葉っぱの音が心地よくて、そのオーケストラをいつも聞いていた。
限界集落と呼ばれるそこには、子供は自分くらいしかいない。なので必然的に一人で遊んでいた。
裏山と言っても林とも森ともとれる場所なので、おじいちゃんが杭にロープを張ってお手製の柵を作ってくれた。その柵に沿って移動をすれば、森の中を一周して家に帰って来れる。自家製の散策路だ。
『もし雨が降ってきたら、あの大きな木の所に行くんだよ』
口酸っぱく言われていた言葉だ。
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