田舎のお話し

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その散策路のちょうど中間地点に、とても大きな木があった。上を見上げても、てっぺんが見えないくらいに背が高くて、葉もたくさん茂っていた。これだけ茂っていれば、確かに雨を凌いでくれそうな感じがするといつも思っていた。 その木の太い幹の傍らには小さな祠もあって、前を通る度に手を合わせていた。 ある日、いつものように散策路を歩いていると、辺りはどんどん薄暗くなり、ポツリポツリと天から雫が落ちてくる。 おじいちゃんとおばあちゃんの言葉を思い出し、少し先にある、あの大きな木の所に急いで行く。雨脚は少しずつ強くなっていくので、帰るにも帰れない。 足早に駆けていくと、この森の大黒柱のような木が見えてきた。ホッとしつつも祠に『雨宿りさせてください』とご挨拶をする。雨のあまり当たらない場所を探して、木・祠・自分という並びで落ち着く。 『なかなか止みそうにないな』と思っていると、背後からガサガサという音が聞こえ、白っぽい野良猫が出てきた。 年老いた猫で、肝が据わってるのか自分の横に普通に座る。
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