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外野の俺としては、そんな金、どこから出てるんだ?という疑問はあるが、本人がそうしたいということならそれでいいと思っていた。
俺のした、質問に正木さんは、頬を染めて照れながら「うん、そーなんだ。」とのろけ話を始めた。
ちょうど客足が途絶えた時間帯だった事もあり、レジに入った後も、延々と愛しの恋人様の話を聞かされた。
◆◆◆
それから、10日ほどたったある日、俺がバイト先から帰ろうとしていると、正にとぼとぼという言葉がぴったりな足取りで歩いているがこちらに向かっていた。正木さんだ。
その顔をじっと見ると、目は泣きはらしたのであろう、赤くなっており、鼻水をずずっ、ずずっ、とすすっていて、折角のイケメンが台無しだ。
俺は声をかけるのをためらったが、先に正木さんが俺に気が付いて、近づいてくる。
「天海~。振られたー。」
言葉にした事により、その時の事を思い出してしまったのか。正木さんの瞳から涙があふれる。
その表情に俺までせつない気持ちになってしまうが、その気持ちに蓋をする。
「俺ん家きますか?今日は飲みましょう。」
そう言うと、涙をこぼしながら正木さんはうなずいた。
一人暮らしをしている自宅に戻ってきて、冷蔵庫から缶チューハイを出して一つを正木さんに渡す。
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