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「俺、一生懸命尽くしたんだよ。そしたら、『自分が無い』だの、『私に合わせてるだけでつまんない。』だの言われてさ。『正木って思ってたのと違う』って何だよ。」
ちびちびとチューハイを飲みながら正木さんは愚痴る。
「素のままでも、物足りないって言われるんだ……。もう一体おれどうしたらいいんだよ。クソッ。」
中々に、腹の中に溜まってらっしゃる物があるようで、正木さんはそれからも延々と愚痴り続けた。
冷蔵庫に入っていた、ビールやチューハイ、カクテルが底をついたころ、だいぶ目が据わった正木さんが、ダンとローテーブルを叩いて、こちらを見ながら言った。
「畜生、お前は、どう思ってるんだよ。腹ん中じゃ俺の事、滑稽だって馬鹿にしてるんだろ!?」
どこがどうなってそういう結論に至ったのかは分からないが、彼の中では俺が正木さんの事を馬鹿にしているらしい。
酔っぱらいは本当に面倒だ。
俺は、ふうとため息をつくと口を開いた。
「俺、正木さんのそういう、恋に一生懸命なところも、相手に尽くしすぎちゃう所も好きっすよ。」
笑顔を作ろうとしたが上手くいかず、真剣な表情のまま言う。
「おまっ、な、す、す、好きって!!」
何を焦っているんだろうこの人は。
普通、この好きはLikeだと思うんじゃないのか?それとも、恋愛体質の人間の間では好きはすべてLoveなのだろうか?
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