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「ねぇ、覚えてる?」
翌日、私は夢の中で思い出した、彼との初デートの話をした。
「急にどうしたんだい?」
彼は少しうろたえているようだった。本当に急な話をしてしまった。けれど今話さなければ後悔してしまうだろうと直感が言っていた。だから私は話すことをやめない。
「あの時のあなた、本当におかしかったわ」
私がくすくすと笑うと彼は当時を思い出してか申し訳なさそうな顔をするのだった。その姿に、私は彼への思いを再確認する。あぁ、私は彼が愛しいんだ、と。彼もまた、私を愛おしいと思ってくれていたらいいのにな、なんて。
まるで初恋のようだった。
「あの時は本当に大変だったんだ。君を待ちぼうけさせたことは覚えているよ」
彼はそう言うと目を伏せた。
2人に共通の思い出があったことが、私は嬉しかった。
「たくさん話して疲れただろう?ゆっくり休むんだよ」
彼はそう言うと病室を後にしていった。
私は襲ってくる眠気に任せて、横になる。
今日はどんな夢を見せてくれるのだろうか。
退屈だった入院生活が少しだけ楽しみに変わっていくのだった。
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