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結婚して4年。私たち夫婦には子供がいなかった。愛が冷めたなんて思いたくないけれど、夫は仕事にかまけて私をほったらかし。世間様から見たら、私たちは立派な仮面夫婦となるだろう。
いつものように夫は仕事へと出かける。私たちの間には会話はもはや存在しなかった。
私はいつものように掃除をし、洗い物を済ませ、洗濯をする。
いつものように、そう、繰り返される毎日だと思っていたのだった。
「あかね?!」
血相を変えて飛び込んできたのは私の夫だった。
私は気付いたとき、病室にいた。家事の最中に倒れてしまったようだった。
帰宅した夫が倒れた私を見つけ、そのまま緊急搬送されることになり、そして入院を余儀なくされてしまった。
「気分はどうだい?」
白衣に身を包み、夫は私に問う。夫の仕事は医者だ。どうやら夫の病院へと搬送されたようだった。
「気分?悪くはないわ」
私はそう答える。
久々の会話が自分の体調を気遣うものだなんて、少し皮肉に感じてしまう。
「良かった……」
夫は心底ほっとした様子だった。
「ストレスと過労だと思うから、しばらくはゆっくりするといい」
夫は鼻の頭をかきながら言う。
「そう…」
私は言葉少なに返事をした。
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