仮面夫婦

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 入院生活が長引くにつれ、私は食欲がなくなってきていた。  病院食は味気なく、もともと口には合わなかったが今はもう、受け付けてもくれなくなってしまった。  そんな私の変化と同時に夫にも変化が見られた。  毎日顔を合わせているけれど、今の私には分かる。 「ねぇ、最近眠っているの?」  私の問いかけに、鼻の頭をかきながら夫は、寝ているよ、と答えた。  これは嘘だ。 「最近はそんなにも忙しいの?」 「そうでもないよ。ちゃんと眠っているし」  鼻の頭をかきながら答える夫。心配にはなるが、まずは自分が回復しなければ、と言う思いに掻き立てられた。  結婚生活の中で、こんなに話しているのは新婚以来だろうか。  毎日会話が出来る。  それがこんなにも嬉しいことだと、私は何故今まで気付かなかったのだろうか。  そしていつもの様に強烈な睡魔に襲われる。私は薄れていく意識の中で夫がなにか言っているのが聞こえてきた。 「君の病気は、僕が必ず治すから」  あぁ、そんなに悲しそうな顔をしないで。  大丈夫、明日からはちゃんとご飯を食べるわ。  すぐに元気になるから。
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