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電車に乗り、街へと帰る。
二人ともドアの近くに立っていたが、微妙に距離が遠い。無論、その間に辰郎と耀子は一言も会話などない。
辰郎は思った。
これからこんな不愛想な奴と行動するのか、と……。
耀子は思った。
これからこんな変態な奴と行動するのか、と……。
思考としてはとても似ていると言える。主に、ネガティブな意味だが。
電車を降りたとて、状況は何一つ変わっていなかった。
前を歩く耀子と、その後ろを気まずそうに歩く辰郎。重苦しい空気が、二人の間を漂っていた。
しかしながら、意外と根が真面目だった辰郎は、このままでは龍玉探しに悪影響を及ぼすと判断する。やむなく、耀子に声をかけるのだった。
「……しかし、街中にいる妖を探せって言われても困ったもんだな。まずそっちを探すので躓きかねん」
「……」
耀子は一切反応することなく歩く。
「そもそも、本当に龍玉なんてあるのか?」
「……」
「そう言えば腹減ったな。お前、夜飯とかどうするんだ?」
「……」
「ていうか、寝る時どこで寝るんだよ」
「……」
「……冷徹不愛想狐女」
「殺すわよ?」
耀子は足を止め凄む。
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