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「だから俺もちったぁ考えたさ。お前の手助けをしてやろうってさ。でも、肝心のお前はこのザマだ。もうそんな気も失せたよ。何が面白くて、そこまで言われてヘコヘコ付いて回らないといけないんだよ。冗談じゃねえよ。やめだやめ。俺にはもう関係ねえよ」
「で、でも……! あんただって手伝わないとマズイんでしょ!?」
「ああ、死ぬかもって話か? それなら大丈夫だろ。玉藻さんの話からすると、そうするつもりもないらしい。そもそも、お前は玉藻さんが本当に俺を殺すように見えるのか?」
「そ、それは……」
誰よりも玉藻のことを知る耀子は、押し黙る。
「安心しろよ。別にお前らのことは誰にも言うつもりはないし。そもそも、もう関わりたくもない。もはや俺には何の関係もないことだ」
辰郎は再び歩き始めた。
「あ……」
何か言おうとする耀子だったが、言葉が上手く出なかった。辰郎はそんな彼女を放置し、振り返ることなく離れていった。
「じゃあな。妖狐の耀子さん……」
そして、辰郎は帰ってしまった。
残された耀子は、手を強く握り、反対方向を振り向く。
「……勝手にすればいいわ。私一人で、探せばいいだけじゃない……」
強がるように、そう呟く耀子。
かくして、龍玉探しを始める辰郎と耀子は、始まる前から終わりを迎えてしまったのだった……。
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